肩甲骨の痛み、右側に激痛が走る症状の原因は?
肩甲骨の痛みを感じたことはありませんか?また、右側や左側のどちらか片方のみに激痛が走ったことはないでしょうか。もしかしたらそれは何らかの病気のサインかもしれません。
肩甲骨の役割
肩甲骨はもともと体重を支える役割を持っています。人間の場合には体重を支える必要はありませんが、重いものを持つときや下半身の力を出すときにも肩甲骨は必要です。また、肩甲骨には肩甲上腕関節と顴骨胸郭関節の2種類の関節があります。
肩甲上腕関節は4つの深層筋が板状の腱となって上腕の骨と連結しています。この腱はとても薄いもので、あまり負荷をかけると傷ついてしまい、少しの傷でも何もできないくらいの激痛に襲われることがあります。
肩甲骨の関節のひとつである肩甲胸郭関節は関節でありながら、ほかの骨とは連結しておらず、関節がどのような位置にあるのかを感じる神経が乏しく、今どの角度で位置してるかといったことがわかりません。また関節としてはかなり不安定な構造なため、一度脱臼すると再び脱臼してしまいます。
もうひとつの肩甲骨の関節である肩甲胸郭関節は肩甲骨の裏側と肋骨の間に位置しており、構造的には傷がつくことはないため無視されがちですが、実はこの関節のほうが重要な役割を担っています。
普通の関節であれば骨と骨が連なっており軟骨や滑液、靭帯などの構造を持っていますが、肩甲胸郭関節の場合は周りには筋肉しかありません。以上のことから、腕の骨と連結している肩甲上腕関節は少出来の緩衝材として、筋肉の挟まれている肩甲胸郭関節は力のない肩関節を支える役割を持っています。
右側や左側が凝ったり痛むのはなぜか
体の歪み
姿勢の悪さなどによって体に歪みが生じ、それが肩凝りや肩甲骨の痛みに繋がることがあります。首や肩、骨盤や肋骨などが歪むことによって肩甲骨の動きを邪魔してしまい、肩甲骨の周りの筋肉が固くなり痛みが生じます。
また、左右に歪みが生じていることによって肩甲骨の痛みも左右で異なります。右に重心がかかって傾いている場合は右の肩甲骨に、左に重心がかかって傾いている場合は左の肩甲骨に痛みが生じます。
肩甲骨自体が歪んでいる場合は、肩甲骨周りの筋肉がより固くなってしまい痛みが強くなります。治すには脚を組むというような日頃のちょっとした癖も身体のゆがみの原因になりますから、日頃の姿勢の改善やストレッチなどで姿勢を矯正する必要があります。
筋肉の疲労や弱体化
長時間のデスクワークや立ち仕事、車の運転など長時間同じ姿勢で過ごしていると筋肉が固まってしまい、血の流れが悪くなります。それによって、筋肉に痛みを感じる疲労物質である乳酸が蓄積されてしまい、肩甲骨の痛みの原因になってしまいます。
それ以外にもなで肩や猫背など普段の姿勢や、加齢に伴い筋力が弱体化したことや日頃の運動不足によって、背中全体の筋肉が衰えてしまい肩甲骨付近の筋肉に負担がかかります。それにより肩凝りや肩甲骨の痛みの原因になることがあります。
激痛が起こるのはヘルニアや内臓の病気のかも
頚椎ヘルニア
ヘルニアというと腰のヘルニアが一般的ですが首には骨と骨の間にクッションの役割を持っている椎間板があり、この椎間板から組織を飛び出し、神経を圧迫することをヘルニアといいます。ヘルニアは首の骨である頚椎にも起こり、これを頚椎ヘルニアと言います。
この頚椎ヘルニアによって、手のしびれや肩、肩甲骨の右か左のどちらかに痛みが生じることがあります。急に肩甲骨に痛みを感じて、その後も治まらずに続く場合は整形外科で診察してもらいましょう。
内臓の病気
内臓の病気がなぜ肩甲骨の痛みに繋がるのかというと、神経の勘違いのために痛みが生じます。肩甲骨の筋肉は内臓と同じ神経で支配されているため、左の肩甲骨に痛みが生じている場合は、膵臓と心臓に何かしらの疾患があるため勘違いが起こり痛みが生じていると考えられます。
内臓からくる肩甲骨の痛みは身体の歪みなどの時とは違い、安静時に痛みがあるため、普段動いている時には痛みがないことが特徴です。
何もしていない状態に痛みが生じ、肩を上げたり重いものを持っても痛みがあまり変わらない場合は、痛みの原因は内臓からくるものだと判断できます。また、空腹時や満腹時には痛みが強くなる場合があります。
肺の病気
肺炎や肺がん、気管支炎などの肺の病気によって右の肩甲骨が痛くなる場合があります。右の肺は構造上の問題によって、左の肺に比べて炎症が起きやすいため注意が必要です。
肝臓の病気
エネルギーの代謝や胆汁生成を司っている肝臓も肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの病気により、右側の肩甲骨から肩や背中に痛みが生じることがあります。肝臓が右側の自律神経を支配しているので、右側に痛みが起きやすいです。
胆のうや胆管の病気
脂肪の分解などを司っている胆のうや胆管も胆石や胆のう炎、胆のうがん、胆管がんなどによって、右側の肩甲骨やわき腹に痛みが生じることがあります。
痛みが伴ったときの主な対処法
お腹に力を入れる
お腹に力を入れることによって、腹圧が上がってお腹の中に隙間ができます。それにより内臓が動き、位置関係が代わり内臓の負担が軽減されるため、肩甲骨の痛みの原因が筋肉疲労である場合には、痛みが軽減されていきます。しかし病気の場合には痛みが軽減されたとしても一時的なものなので、病院で治療してもらう必要があります。
ストレッチ
肩甲骨の痛みの原因が肩甲骨周りの筋肉疲労や体の歪みの場合、肩甲骨自体を動かしたり姿勢を改善させることで、肩甲骨の痛みは解消されます。姿勢を改善する場合には肩甲骨の痛みが改善されるだけでなく、
- 見た目が良くなる
- 腰痛がなくなる
- 自律神経が整う
- むくみが改善される
などのメリットがあります。
肩や肩甲骨のストレッチ
デスクワークや立ち仕事など長時間同じ姿勢を取り続けることや片方の手や腕ばかり使っていると、肩周辺の筋肉が固まってしまいます。その固まった筋肉を意識的に動かすことで可動域が広くなり、肩甲骨の痛みや肩こりが改善されます。
- 後ろで手を組んで体を反らす
- 両手でバンザイする
- 腕をなるべく大きくゆっくり回す
など肩や肩甲骨辺りの筋肉を伸ばすことを意識して、いろいろ試してみましょう。
姿勢のストレッチ(1)
猫背など姿勢が悪いと血の流れが悪くなり、筋肉も固まりやすくなって肩甲骨の痛みや肩こりに繋がります。
- 立った状態で腕を上げ、頭の後ろで腕を組みます。
- その状態を維持しながら5秒かけて息をゆっくり吸います。これによって胸やお腹がしっかりと伸びます。
その後ゆっくりと息を吐きます。これを5回ほど繰り返します。
姿勢のストレッチ(2)
- 腕を伸ばして後ろで腕を組んで、できるだけ後ろに引っ張ります。
- このとき肩甲骨同士を寄せることを意識しましょう。
- そうしたら頭上に上げ、この状態を維持しながら3秒ほど息を吐きます。
これを5~10回ほど繰り返します。
その他にも日頃歩いている時や座っている時に正しい姿勢を意識して過ごしてみると良いですね。ただ最初はつい忘れてしまったり、ずっと正しい姿勢を維持し続けるのは難しいかもしれないので、「信号待ちの時だけ」とか「仕事を始めるときの数分だけ」というように時間を短く限定してみると習慣にしやすくなります。
痛みの原因が病気でなければ自分で改善することができる
肩甲骨の痛みの原因が頚椎ヘルニアや内臓の病気であれば、自分で対処することは不可能なので病院へ行って、その病気自体を治療してもらうしかありません。ですが、肩甲骨周りの筋肉疲労や体の歪みが原因の場合には、ストレッチや姿勢を改善させるなどをして自分で対処できます。
- 肩や肩甲骨のストレッチ
- 姿勢のストレッチ
姿勢が悪いのは肩甲骨の痛みだけでなく、様々な病気を引き起こす原因にもなりますし、この機会に一度見直してみてはいかがでしょうか。